私たちは生きていると、いつ自分の人生を振り返ってみるのでしょうか。
ほとんどの人が外傷トラウマくらいの強力な苦痛を経験しない限り、自分の人生を振り返ってみることはしません。
外傷トラウマが発生すると、自分が生きてきた日々が一気に崩れて、現在は苦痛で、未来も見えなくなりますが、この時が自分の人生を振り返ってみるきっかけになります。以前は平凡に楽に暮していたのに、つまり多くの人は現在が安楽なので、自分の幸福のために何かをしようとは思いません。安楽さ自体と幸福だと考えて生きているからです。むしろ傷だらけの人生を生きてきた人が「幸せになる」、「幸せになりたい」と口にします。このような人たちは、自分が不幸だから、その反対給付として、「こうすれば幸せになるかも、ああすれば幸せになるかも」と考えながら、常に幸せについて話します。
安楽さを幸福だと考えて生きてきたのは間違いではありませんが、ある日突然外傷トラウマが発生して、自分の人生すべてが崩れたと思い、過去を振り返ってみたとき、傷だらけの人生だったと偽の傷をつくることになります。
この偽の傷を元も状態に戻し、現在発生している不倫とつながっている本物の傷を治療して、過去も現在も幸福に転換させるのが治療です。治療に自分の人生全体の幸福がかかっているのです。
以前の安楽さには実際には幸福という概念はありませんでした。たとえ外傷トラウマで強力な苦痛によって、自分の人生を振り返ってみることにはなりましたが、治療をとおして人間として生きるときに何が本当の幸福なのかが分かる機会がきたのです。